単位のはなし SI単位系

日常生活でも単位というものはとても大切で、身近なものですね。単位とは数字の後ろにつけるもので、リットル(英: litre, 米: liter)や長さを表す メートル(英: metre, 米: meter)などは一般的です。お金の単位「円」や「ドル」「ユーロ」なども単位です。

日本国内だけだとそんなことはないですが、海外旅行でお店で買い物するときなどは「100」とだけ書かれていると100米ドルなんだか、100香港ドルなんだかどっちだ?みたいに、ちょっと不安になる時があります。

科学の世界では統一した単位を使いましょうということで国際単位系(International System of Units、略称:SI エスアイ)というものが決められています。理系の大学にいったら、結構はじめの段階で習うのではないでしょうか?

SIの前身と言えるものが「メートル法(metric system」というもので、これは世界中でバラバラな単位が使われ、商取引などでの不都合が顕著になってきたために作られたもので、18世紀末のフランスにおいて制定されたそうです。いまから約200年前の話。

補足説明
英語表記の略称だとISとなると思うのですが、フランス語の表記(Système International d’unités)の略称でSIとしているようです。

いまだに文化や地域によって単位が違う

メートル法の制定から200年経ったインターネット時代の21世紀にもかかわらず、同じものの量を示すのにいまだに単位が統一されていない国があります。

アジアの僻地での話しなどではありません。

わかりやすい例だと、アメリカです。彼らはいまだにメートルやキログラムではなく「インチ」や「ポンド」「マイル」などを使い続けていますね。ほんとわかりづらい。

これについて書かれている、記事をみつけました。

なぜアメリカは「メートル単位」をかたくなに拒絶するのか?(Gigazine)

インチやフィートはおおよそ、親指の幅や足の裏の長さなど単位としてイメージしやすくて、広く馴染まれているから変えるのがめんどくさい。必要なところではメートルとか使ってるから問題ないね。という感じで書いてありますが

これって、数百年前に他の国々は乗り越えた事だから。

ヨーロッパも日本も使い慣れた単位を移行しろって言われても、一般人の反発は当然あってそこを法律や制度を変えて頑張って移行していた歴史があるわけで。この話に関しては単にアメリカの怠慢としか思えない。

日本のメートル法の完全実施は1966年だったらしいので、それだけ頑張って移行したということなんですよね。

まあ、文句を言ってもメートル法が一般に普及していないアメリカに行く際には、こういうものなんだからしょうがないなと。逆に単位が共通言語として統一されていない世界の不便さを少し体感できる国。それがアメリカでもあります。

6オンスのステーキと12オンスのステーキ。たった「6」の違いですが グラム(g)になおすと、170gと340g。かなりの量の違いですからね。

メートル法がさらにややこしくなり、SIが作られた

最初にフランスで導入されたメートル法。これで必要とされた単位は

  • 長さ・面積
  • 体積
  • 質量

上記の3つのみでした。

その後、科学の発達で他の物理量についても単位が必要となり、メートル法を基本としながら色々な単位がつくられバラバラになってきたためにこれらを再統一するために作られたものが国際単位系(SI)ということです。

SIの基本単位は7つ

物理量単位
長さメートル (m)
質量キログラム (kg)
時間秒 (s)
電流アンペア (A)
温度ケルビン (K)
物質量モル (mol)
光度カンデラ (cd)

これらの7つの基本単位の根本にあるのが、以下の7つの定義定数で証明されている

メートル真空における光速度 c が 299792458 m/s
キログラムプランク定数 h が 6.62607015×10−34 J s
基底状態にある摂動を受けないセシウム133原子の超微細遷移の振動数 ΔνCs が 9192631770 Hz
アンペア電気素量 e が 1.602176634×10−19 C
ケルビンボルツマン定数 k が 1.380649×10−23 J/K(s−2·m2·kg K−1に等しい)
モルアボガドロ定数 NA が 6.02214076×1023 mol−1
カンデラ周波数 540×1012 Hz の単色光の発光効率 Kcd が 683 lm/W
補足説明
この表は2019年5月20日に施行された新定義に基づいていますが、化学の分野だとモルの定義が変わったのが興味深いですね。いままでの12C 1molの質量が正確に0.012kg という定義ではなくなったんですね

なんだか、難しいと思うのですがこの定義定数という7つを掛け合わせたり、比にすることによって 基本単位が表現できるのです。

例えば、長さの単位メートル(m)を見てみると1メートルとは、真空中で299792458分の1 秒間に光が進む長さ と定義されています。

これは、光が1秒間に299792485m進むのですから、わかりやすいですね。そのままです。(計算すると、0.00000000333秒で光は1m進むということです)

その他の基本単位も、定義定数といわれる普遍的な定数をごにょごにょすると導き出されるんです。

単位の世界での基準の物体がなくなった。

「キログラム原器」と言われるガラスに覆われた分銅みたいな金属の塊を教科書でみたことありませんか?キログラムだけが、あのように人間が作った物に依存していた唯一の単位として残っていたのですが、2019年のSI基本単位の再定義によりプランク定数に基づく定義に置き換えられました。これで全ての基本単位が普遍的な定数によって定義されるようになったのです。

産業技術総合研究所
産業技術総合研究所

日本国キログラム原器について

私たちの生活に関わるのか?

SIのキログラムの定義の変更などは、なんと130年ぶりの再定義だそうです。では、これで何がかわるのか?近年の高度な科学技術の研究分野などでは誤差が小さくなるなどの変化があるかもしれませんが、われわれの日常生活には一切影響はないと言えます。

科学が急激に発展してから数百年。いまだに単位という基本的なところをさらに正確にしようという試みが行われていました。科学はもちろんビジネスの世界でも、物事の定義というのはとても大切です。今回のSIのキログラムの再定義などはとても象徴的で、人工物のような何かの影響で変化してしまうような物ではなく、より普遍的なもので定義する。

私たちの生活でも物事の定義をちゃんと理解し、ニセ科学に騙されない正しい科学の知識で本質を見極めていきたいと僕はそう思います。

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アルケミストラボ所長のようへいです。 科学に関する情報を時には深く、時には浅く さまざまな方にとってタメになるような情報を記事にさせて頂きます。 理学部化学科卒のようへいがお答えします。 何か質問などございましたら、ご遠慮なくどうぞ!